士弓です。凛→士でもあります。
まだできてないふたりのはじめてです。
2からいつものとおり性描写があるので自己判断でお読みください。
遠坂邸にお茶に呼ばれた士郎が、ふらふらとしながら帰ってきたのは食事時のことだった。
「なんだ。食事は凛のところですませてくると言っていたから、お前の分は用意していないぞ。熱でもあるのかふらふらして」
返ってきた答えは、なんだか覚束ないものだった。
「うーん。やたらと体が熱いんだけど、熱があるのかなぁ。なんかぼーっとするし、遠坂は泊まっていけって言ったけど、そんなわけにもいかないから帰ってきたんだけど、風邪かなぁ」
「はぁ? 凛が泊まれと言っただと?」
以前は衛宮家に寝泊りしていたとはいえ、凛は魔術師だ。
自分の工房に弟子とはいえ、半人前以前の魔術使いを泊まらせるなど考えがたい。
あそこには、不用意に扱うと危険なしろものがたくさんある。
熱があるから泊まれというのも不自然だ。
いつもの彼女なら、さっさと衛宮家に士郎を追い返すだろう。
だとしたら……。
「凛に何か飲まされなかったか?」
「へ? 紅茶とチョコレートもらっただけだけど。そういえば、ちょっと変わった味のチョコだったな。あれ? そういえば、チョコ食べてから急に体が熱くなったような気がする」
「ガラナチョコか……凛も大胆なまねをする」
「ガラナチョコってなんだよ」
アーチャーはため息をついて説明した。
ガラナチョコとは、アマゾンが原産のつる植物の種を原料にしたチョコで、古くから強壮剤として使われている。
回復剤として使用されるハーブと違い、エネルギー回復剤として使われたりエクスタシー効果も高めるため、究極の天然媚薬と呼ばれている。
副作用もないし、違法性もない。
恋人同士が軽い気持ちで手を出せる小道具だ。
「な、なんで、遠坂が俺に媚薬なんて盛るんだよ!」
「お前に甲斐性がないからではないか? 凛はラインとかと関係無しに、お前ともっと親密な関係になりたいと思っている。それなのに今ではすっかり弟子兼お友達だからな。焦って行動に出たのだろう。泊まって押し倒してやるのが正解だったな」
「なんてこというんだよ! やだぜ俺は。薬のせいで遠坂に何かするなんて! そういうのはお互いの気持ちの問題だろう」
「まあ、そうだな。青臭い理想論だが、間違ってはいない。凛も何を焦っているんだか」
話しながら、アーチャーは士郎が自分から視線を外そうと努力していることに気がついた。
「何を見ている」
「いや、俺も見る気はないんだけど、なんでかお前から目が離せなくて……」
アーチャーは天井を仰いだ。
媚薬を盛られたせいで、普段は隠しているアーチャーの性的フェロモンに釣られているらしい。
何の因果で自分に欲情されなければならないのか。
本人に自覚がないのが救いなのかどうなのか。
だが、アーチャーはこの現状を面白いと思った。
「気は進まないが、楽にしてやろうか?」
「えっ? これどうにかなるのか?」
疑うことを知らない士郎に、アーチャーはにやりと笑って告げた。
「効果がなくなるまで、欲求を解消してしまえばいいだけの話だ」
唖然とする士郎に触れるだけのキスをすると、途端に士郎の顔が真っ赤に染まるのを、アーチャーは完全に面白がっていた。
[2回]
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