「なんでこんなことに」
熱に浮かされたような声で、士郎が呟くが、アーチャーはそれをさくっと無視した。
力が入らないのだろう体を押し倒して衣服を剥ぎ取ると、自分も裸になった。
動きが鈍い士郎の抵抗をなんなく封じると、両足を開かせ、ゆるく起ちあがった士郎の熱棒を、アイスキャンディーでもしゃぶるように、舌を這わせ、口腔の奥に含んだ。
「ちょ、な、なにしてんだよ!」
「まかせておけ。いい思いだけさせてやるから、大人しくしているがいい」
「納得できるか!」
「うるさい」
往生際悪くわめき続ける唇を、アーチャーは自分の唇でふさぐと、歯列を割って、舌を絡めて吸い上げる。
何度も繰り返し口の中を蹂躙すると、真っ赤になって士郎は大人しくなった。
アーチャーは、この状況を思いのほか楽しんでいた。
身動きもままならない士郎を、自分の思うとおりにするのは、なかなか興奮した。
他人に対しては、実は押しに弱く、どこか受身になってしまうアーチャーだったが、自分相手に遠慮はいらないということかもしれない。
先走りの液で濡れた士郎自身を、丹念に愛撫する。
「や、やめ……ろ、よ…もっ、もたないから……はな……せ」
「気にするな。私は気にしない」
そういうと、士郎自身の根元から絞るように舌でなぞると、亀頭を口に含んで、雁のあたりを軽く噛んだ。
次の瞬間、勢いよく白濁した液体が、アーチャーの喉を直撃した。
そのまま一滴残らず飲みほすと、ぐったりしている士郎を尻目に、唇を舌で舐め取った。
「甘い……な」
「飲んだ。飲んだな。なんなんだよお前。汚いだろうが」
「魔力の奔流を汚いとは子供だな。お前程度の魔力でも私には十分糧になる甘露なのだよ。まだ満足はしていないのだろう? 大人しくしていれば、今まで感じたことのない快楽を味あわせてやろう」
「冗談だろ」
「ここまできて、冗談のわけなかろう」
アーチャーは、口の中に残っていた精液を手に吐き出すと、それと唾液を指に絡ませた。
そのまま体を強ばらせた士郎を見て、愉快そうに笑うと、己の後孔に指を入れてかきまわした。
一度に指を入れたので、少なからず痛みが走る。
それを無視して、入り口付近を十分にほぐすと、薬のせいですぐ力を取り戻した士郎の肉棒に、ゆっくりと腰を下ろした。
「えっ? なんで……」
「なんだ。犯されるほうが好みだったのか? 悪いが私はこっちの方が慣れているのでな」
「そんなわけないだろ! って、え? 慣れてるのか?」
「慣れていないのに、いきなり男に乗っかったら大惨事だろう。別に挿入してやってもよかったが、素人相手に痛みもなく快楽を与えるすべなど私は知らんからな。慣れているほうを選ばせてもらった。悪くはないだろう?」
「そういう問題なのか? というか、なんで慣れてんだよ。おかしいだろう」
「どうでもいいだろう、そんなことは。大人しく快楽だけを貪ればいい」
そういうと、アーチャーは一気に根元まで熱杭を受け入れた。
生前の経験をキャンセルされた体には、さすがにこれはきつかったが、痛みさえ快楽に変えるすべをアーチャーは知っていた。
ゆっくりと上下すると、こなれてきた内部が熱杭を強く締め上げた。
士郎が快楽に眉を寄せるのを見て、アーチャーは激しく体を動かした。
「あっ、あ……んっ、……くっ!」
「はっ……アーチャー」
いつの間にか、士郎も腰を動かしてアーチャーを追い詰めていた。
拙い動きだが、今のアーチャーには、それさえも快感だった。
何度目かの突き上げで、アーチャーが達した瞬間、内部の奥のほうで熱い奔流を受け止めた。
薬の効果が切れて、ぐったりとした士郎を、アーチャーは楽しげに見ていた。
ふたりとも寝巻きに着替えて、さっきの行為の証拠は、アーチャーの中に放たれた液体しか残っていない。
それもすぐに魔力として変換され、消えてしまう。
「どうだ、楽しかっただろう?」
「強引過ぎなんだよ」
怒っているわけでも、自己嫌悪に陥っているわけでもないらしい士郎を不審に思って、アーチャーはその目をじっと見つめた。すると、考えてもいなかった言葉が士郎から発せられた。
「俺、お前のこと好きだから、これからよろしく」
「は?」
本気で何を言っているのかわからなかった。
わけがわからないアーチャーを置いてきぼりにして、士郎が言葉を続ける。
「いきなりって、わけじゃないからな。前からそうなんじゃないかと思ってたけど、今回のことで自覚した。遠坂のことも好きだけど、お前のことも好きだ。そういうことだから、俺はもう寝る」
「は?」
アーチャーはしばらく固まった末に、一言だけ漏らした。
「なんでこんなことに」
それは、誰にもわからない。
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チョコは出てくるけど、バレンタインとは関係ない話で。
相変わらず、エロがエロくありません。
アーチャーに弄られる士郎と見せて、反撃する士郎で。
弓士っぽいけど、士弓です。
[2回]
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