この想いを、なんと呼ぶのか知らない。
痛みすらも遠くなった暗闇の中で、消えることのない黄金を手放すことができない自分を嘲笑おうとして、もはやそれすらできない己の姿を心の中だけで笑った。
いっそ愉快なほど、自分の中にはあの方しか存在しない。
憎しみも、無念も、悔恨も、親友への未練すら、どこまでも遠い。
これでようやく解放されるのか。
稀有なる、ただひとりの存在で己を満たすことが、ようやく許されるのか。
「マインカイザー」
どれほどの想いをこの言葉に込めたのか、知るものは誰もいない。
双璧と呼ばれた親友ですら、最後まで気がつくことはなかっただろう。
あの方を呼ぶたびに走った、あの甘い痛みを、知るものなどいはしない。
道を違えたのは、あの時。
半身を失ったあの方の脆さを、知ってしまったあの瞬間から、破滅はもう始まっていたのだろう。
それでも、破滅と引き換えにこの想いがあったというのなら、それすらも感謝しよう。
赤毛の青年が失われることがなければ、かの方に永久の忠誠すら誓うことすら迷いはなかっただろう。
だが、もうしそうっだたなら、これほどまでにあの方の存在に縛られることもまたなかった。
ならばこれでいい。
破滅しかなかったとしても、この想いを手に入れることができたことが、俺に与えられた最大の幸福だから。
あの方はもう、俺を忘れることがない。
この想いを、なんと呼ぶのか知らない。
「マインカイザー」
この言葉を、最も美しく呼んだのは、ロイエンタールだったと伝えられている。
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