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亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
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龍麻の従妹麻麟と龍麻のホワイトデーのお話です。
一応如月×龍麻、壬生×龍麻ですがふたりは出てきません。
記念SSなので、ご自由にお持ち帰りください。
 


 異次元空間に存在すると密かに噂されている龍麻の居住するアパートは、住人の許可を得ない人間は決してたどり着くことができないという、どこまでも謎な建造物である。
 龍麻の部屋は角部屋で、お隣さんはひとつしかないわけだが、もうすぐ一年がたつというのに、龍麻は隣の住人に会ったことがない。
 時折高笑いが聞こえるので、いるのは確かなのだが、さほど迷惑でもないので放っておいている。
 龍麻の部屋は3階だが、上からはしばしば謎の発光が、下の部屋からは奇妙な呪文が延々と続くこともある。
 絶対お知り合いになりたくない。
 それもまた希望通りなのか、龍麻はこのアパートの住人に一度も会ったことはなかった。
 それより謎なのは、このアパートを用意したワカメ頭オヤジである。
 なぜなら、ワカメオヤジも龍麻が用があるときしかたどり着けないからだ。



(どうやって、契約とかしたんだろうな)



 そんなどうでもいいことはともかく、龍麻は冷蔵庫で寝かしておいた生地の成形にかかっていた。
 生地は二種類。
 プレーンの生地と、ココアの混じった茶色い生地だ。
 それを麺棒でのばし、細長く切り取っていく。
 切った生地を交互に重ねて出来上がったものを四角くまとめると、きれいな市松模様ができあがった。



「懐かしい。アイスボックスクッキーだね」



 龍麻の手元を覗き込んで、従妹で義理の妹の麻麟が既に出来上がった搾り出しクッキーを袋詰めしながら言った。



「あ~、まあ、先月は俺も大人気なかったかとおもって」



 ラップに包んだ生地を冷凍庫に入れると、龍麻は目を泳がせた。



「紅葉さんのチョコトリュフだったよ。もう絶品! 残念だったねひーちゃん」



 先月のバレンタインデーは、大騒ぎの末に、男の手作りチョコなど気持ちの悪いものはいらないという発言の末、こっそりホットチョコを差し出した壬生だった。
 ちなみにその時、如月は虫退治に精を出していたという。
 当然、虫とは龍麻にまとわりつくあれこれである。



「ああ、くっそー! 紅葉の手作りなら大歓迎だったのに! 誰だよ余計なこと紅葉に言ったのは!! 恥ずかしがる紅葉は可愛かったけど、チョコトリュフ……俺もくいたかったなぁ……」


「私はラッキーだったけど。ホントはひーちゃん用に作ったみたいだよチョコトリュフ。寂しげな紅葉さんも美人だったよぉ! 麻麟さんもチョコが好きだと聞いていたからね、貰ってくれないかい、だって! あんな切ない表情で言われたら、ホントはひーちゃんに食べてもらいたかったんだってわかるって! 紅葉さん最高!」


「男女を問わず美人に弱いのは知ってたけど、なんで麻麟は紅葉はよくて、翡翠はダメなんだ? 翡翠だって美人じゃないか」



 そういう問題だろうか。
 大雪山と京都での修行の合間に、しょっちゅう龍麻のところに入り浸っている麻麟と、骨董屋の若旦那如月は、何故か会った瞬間から火花が散っていた。
 如月の話題が出ると、途端に日本人形のように非人間的なまでに整った美貌が大きく歪む。
 ゴキブリを見たとき、人はこのような顔をする。



「だって、忍者よ。生忍者。しかも招き猫マニア! 顔がよくたって、センスに問題がありすぎ!」



 如月はファッションで忍者をやっているわけではない。
 骨董屋と同じく家業である。
 好みの問題なのだろうが、何故か如月の方も麻麟を敵対視していて、龍麻も知らない間に、微妙な三角関係が麻麟と如月と壬生の間にも発生していた。
 愛ではなく友情と敵対のトライアングルである。
 幼い頃から互いを婚約者と考えていた龍麻と麻麟だったが、宿星に導かれて出会った仲間たちとの戦いを通して芽生えた友情や恋は、龍麻に自分にとっての麻麟という存在の意味を悟らせた。
 誰よりも自分よりも世界よりも大切な相手だとしても、それは恋ではないのだと。
 何よりも麻麟を愛している気持ちに変わりはないのに、それが恋ではないと気がついたことで、そして、自分がどうにもならないほど想う相手ができたために、ようやく自分たちは本物の家族になったのだと龍麻は思った。
 麻麟の気持ちはよくわからない。
 あれほど自分に執着していたのに、如月と壬生を両方同じ強さで想っていると指摘したのは麻麟の方だった。
 恋愛問題に疎い龍麻は、言われなければ気がつかなかったかもしれない。
 如月は気に入らないが、壬生は好みだし、何より龍麻がよければそれでいいらしい。



「そんなことより、はじめてひーちゃんに作ってもらったのもこれだったね」


「ああ、そういえば、麻麟が初めて作ってくれたのも、その絞りだしクッキーじゃなかったか?」



 龍麻が小学校6年、麻麟が4年生のときだ。
 緋勇の家では、おやつといえば羊羹か和菓子と決まっていて、洋風のものが食べたければ自分で作るしかなかった。
 お互いお小遣いで本や材料を揃えて、はじめて作ったのが、アイスボックスクッキーと搾り出しクッキーだった。
 互いに手作りのお菓子を相手に食べてもらいたかったのだ。
 それ以来、お互いのために腕を上げてきたので、菓子に限っていえば、おそらくふたりとも壬生にだって退けは取らないだろう。



「まあ、基本に返ろうかと思ったのよね」


「俺もそんなところかな」


「誰かのためにってのが重要なんだよな」


「結局は気持ちでしょ。特にひーちゃんは、心こもりまくりだよね?」



 麻麟はクスクスと笑った。
 龍麻も自然と笑顔になる。
 ずっとふたりだけで生きてきた。
 ずっとそうするのだと思っていた。
 だけど、今は大切な相手がたくさんいるし、特別な人もふたりも増えた。
 それはきっといいことなのだろう。



「麻麟も、自分だけの相手を見つけたらどうだ。相手によっては承知しないけどな」


「それこそ大きなお世話ですよ~。ひーちゃんは、自分のことを一番に考えようよ。私もこれからはそうするよう努力するから」


「ああ、努力な。難しいな」



 クッキーが焼きあがる頃には、如月と壬生が来ることになっている。
 牽制しあう麻麟と如月。
 それをどう止めようかと戸惑う壬生。
 そして、その光景を笑って見ている自分。
 容易に想像できて、龍麻は少し寂しくなった。



「ふたりっきりのイベントは、もうないかもな」


「そこで、郷愁にふけってどうするのよ。壊れた世界はもう元通りにはならないの。それは、ひーちゃんが選んだ世界。そして、私が選んだ道でもあるのよ」



 だから多分、これでいいのだ。
 二人だけの閉じた幸福は壊れてしまったけれど。



「麻麟を幸せにすることを誓うよ」


「ひーちゃんを幸せにすることを誓うわ」



 子供のときから何度も繰り返した誓いをふたりは口にして、顔を見合わせて笑った。
 もうすぐ、互いの世界を壊したふたりがやってくる。
 それは、幸福で、少し切ないことだった。



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こんな幸せな日まで切なくしますか自分!
しかも、これでは麻麟×龍麻?
ふたりは深い兄妹愛で結ばれているのであって、龍麻の恋人は壬生と如月です。
バレンタイン記念SSと合わせてフリーですので、ご自由にお持ち帰りくださいませ。

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