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亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
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京一×龍麻でシリアスです。

「許さないもんは許さないんだよ!」


 あんな顔をするなんて、どこまで卑怯な野郎だ。
 自分が何をしたか、わかってないんだろう。
 そうだお前は、なんにもわかっちゃいないんだ。


「もう俺に声をかけるな。俺を見るな。俺のことを考えるな!」


「できるわけねぇじゃねえか!」


 できるわけがない。
 当然だ。
 そんなことわかってるに決まってるだろうが。
 何を言ってるんだこいつは。


「許してくれなんて言わねぇよ。俺のしたことは最低だ。んなこたぁ、わかってるよ……けどな、ひー……龍麻」


 言いよどむな、馬鹿が。


「俺にどうして欲しいんだよ! 俺を殺してぇっていうんなら、それでもいいさ。お前に殺られるならな。けどよ……お前のこと考えるなって……そんなことどうすればできるのかなんてわからねぇ!」


 何様だお前は。
 して欲しいことなんてひとつもない。


「それを俺に聞くのか」


 頭の芯が急速冷凍されてる気がする。


「おまえは、何もわかってない」


 踵を返して、俺は旧校舎を後にした。


「お前だって、俺のことわかってねぇじゃねぇか!」


 今ごろ分かったか。
 遅すぎんだよ。
 人は他人を理解したりできない。
 俺は、お前にわかってくれなんて言ったことがあるか。
 それを、お前はわかろうともしないんだな。
 俺は振りかえらなかった。
 あいつの顔なんて二度と見たくない。
 それは、本気だった。

「お前はやっぱり馬鹿だよ……京一」


「だりぃ」


「お茶のおかわりはどうだい龍麻」


「ほうじ茶」


「……いれなおしてくるよ」


 文句ぐらい言えよ。
 コタツの上に出された湯のみを持って台所に向かう翡翠の後姿を見ながら、俺は床と仲良くなっていた。
 翡翠は俺に甘い。
 俺を見る目に魅了の魔法がかかってないやつは仲間にはいないが、紅葉と翡翠はツートップと言ってもいいぐらいだ。
 厳しい時には厳しいけどな。
 紅葉はちょっと違うというか、別だし。
 俺を甘やかすことで俺に甘えてるんだ紅葉は。
 可愛いよな。
 いや、そうじゃなくて。
 ほのぼのしてる場合か俺。


「バカ猿が……」


「蓬莱寺がどうかしたのかい」


 猫舌用に少し冷ましたほうじ茶を置いて、翡翠が俺の顔を覗きこむ。
 何度見ても見飽きないキレイな顔だ。


「お前は俺のオアシスだ」


「……ありがとう……で、龍麻?」


「昔はもう少し反応があったのになぁ。可愛くないぞ翡翠」


「慣れたからね。さすがに」


 翡翠のいれた茶はうまいな。
 俺を見る目が恨みがましい気がするのは気のせいだろう。


「裏切られたって思うのは嫌いなんだよ」


 かってな思いこみを壊されたから相手を責めるのか。


「信じてたのにって、そりゃこっちの勝手だろう?」


 裏切られたと思う方が馬鹿げている。


「だって俺は──────────」


 あいつを信じたことなんてなかったんだから。


「いいんだよ龍麻。言わなくても」


「翡翠」


「信じたかったんだろう? 君自身がどう感じていようと、信じていたんだよ。きっと」


「きたのか。あの馬鹿」


「1度ね」


 何があったのか、翡翠は聞かないけど、事情はだいたい想像できてるんだろうな。
 翡翠もよくあの猿を殺さなかったものだ。
 紅葉にばれたら、それがあいつの命日だな。
 旧校舎で猿と別れてから、俺は1度も学校にも自分の部屋にも行ってない。


 翡翠の家に入り浸りの俺を心配して女のこたちや霧島が訊ねてきたけど、今はそれも全部わずらわしかった。
 まあ、別に普段でもうぜえと思ってるけど、思わず黄龍かましそうになるぐらいはな。


「愛してるって、暴力だと思わないか?」


「……そうかもしれない」


 好きだと言った。
 俺を愛してると。
 全部、終わったあとに。
 嵐のような衝動に流されたあのとき、あいつは俺の言葉を、1度も聞いていなかった。


「許したいんだな……きみは」


「許さないけどな」


 なんで俺はここまであいつを許せないんだ。
 抵抗しようと思えば楽勝だった。
 もう、それだけの力の差ができてしまっているのを、あいつは知らない。
 それでも、俺が本気で抵抗したらどうなっていたのか、わからないあいつは際限がない馬鹿で、そんな馬鹿に振り回されている俺はもっと大馬鹿だ。



「俺は翡翠がいいのに」

 
 本気で言ったのに、そう言うと、翡翠は苦笑した。


「きみは残酷で傲慢で自分勝手だ」


「ああ、そうだろうな」


 わかってるよ翡翠。
 俺はおまえたちに甘えている。
 何故、俺が選べる相手がお前でも、紅葉でもなかったのだろう。
 あいつは相棒だった。
 俺はそれだけでよかったのに。


「でも、お前は知ってるだろう?」


「そう。知ってるさ……だから──────」


 続いた言葉を、俺は聞かなかったことにした。


 明日は学校に行こうかと、ぼんやりと考えた。
 あの馬鹿は、いつか気がつくだろうか。
 俺たちが、本当に失ってしまったものの事を。
 もう戻れない。それだけが事実だった。



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