意識を飛ばしていたら、腫れた頬を平手打ちされて、正気に戻った。
何人目だかわからない男の肉棒は、肚の奥を穿ったままだ。
「おい、口開けろよ。歯立てるんじゃねーぞ」
そう言って無理矢理開いた口に、青臭い肉の棒が突っ込まれた。
上下の口いっぱいに、男たちの欲望を含まされて、頭を激しく動かされる。
さらなる暴力が振るわれないように、慎重に舌を動かした。
喉を突く衝撃に吐き気がこみ上げるのを、なんとかやりすごし、ただ揺さぶられるだけの肉人形と化す。
喉の奥に熱い飛沫が放たれた次の瞬間、肚の奥にも欲望の証がぶちまけられた。
吐き出さずに飲み下すと、げらげらと笑い声が響いた。
ああ、そうして笑っていやがれと黒崎は思った。
お前らの行為の何一つとして、俺を傷つけたりしないのだから。
底辺にならすでに落ちている。
こんなのは一時的なことだ。
大した事じゃない。
「とんだ淫乱だな。自分から腰振ってやがるぜ」
「おい、今度は俺の番だぜ、そこ代われよ」
「俺は上の口をいただくぜ」
別の男たちが代わる代わる自分を犯すのを、冷めた気分で黒崎は流された。
受け入れたわけでも、諦めたわけでもない。
受け流したのだ。
意識を空っぽにして、ただ蹂躙されるだけの人形と自分を定義する。
犯されているのは自分じゃない。
それは一種の現実逃避だったが、それしか黒崎には狂った暴力と欲望に抵抗するすべがなかった。
体中に精液をぶちまけられがら、しばらく仕事に行けないなと黒崎は考えた。
それでも体の傷は癒えるし、こんなこと心の傷にもならない。
そして意識が白くなった。
気がついたとき周りには誰もいなかった。
ぼろぼろになった服が絡みつき、最後の良心なのかなにか、上着がかけられていた。
「チンピラが、くるなら殺すつもりでこいよ」
上着のポケットに入っていた棒付きキャンディを口に入れると、切れた口内が沁みて眉をひそめる。
体中の痛みを無視して立ち上がると、上着を着て倉庫の外に向かった。
海沿いの場所は潮の匂いがした。
「さてと、部屋に戻るか」
男たちに犯されている時、何故神志名のことが頭に浮かんだのか黒崎にはわからなかった。
最初に神志名と寝た切っ掛けが、同じようなことの後始末だったからだろうか。
だが、二度もこんな有様で神志名のところには行けない。
大人しく怪我が治るまで寝ていよう。
「あーさむっ。ほぼ裸にコートって、俺変態じゃねえ?」
警察に職務質問されないことだけを祈りながら、黒崎は家路を急いだ。
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