新羅からその言葉を告げられた時、静雄は本気で意味を把握し損ねた。
「なんだって?」
「臨也が死んだんだよ。今朝のニュースにもなった。君は知らないだろうと思ったけどね。もう臨也はどこにもいないんだ」
通り魔に腹部を刃物で刺されて、出血多量のためのショック死らしい。
臨也の仕事が仕事だから、トラブルに巻き込まれて始末されたんじゃないかというのが警察の見解だ。
ニュースには出ない情報だけどね。
遺体は司法解剖されてから遺族に帰される。
死ぬまでに多少の時間があったというから、苦しんだだろうに、幸せそうに笑っていたそうだよ。
そこまで言って、新羅は溜息をついた。
「いつかこんなことになるんじゃないかと思っていたけどね。迷ったんだけど、君には私が伝えるべきだと思ったんだ。数少ない両方の友達としてね」
言われたことが理解できなかった。
ノミ蟲が死んだって。
そんなことは信じられない。
だってあいつは──。
「あいつは、俺が殺すんだ」
「静雄、臨也が君の前に現れることはもうないんだよ。君に殺されるんなら臨也も本望だったろうけどね。死んだ人は生き返らない。池袋も新宿も、どこを探しても臨也は見つからないよ。僕らは臨也において行かれたんだ」
確かに伝えたよ。
それだけ言って、新羅はセルティの黒バイクの後ろに乗って去って行った。
セルティは何も告げなかった。
何を言ったらいいのかわからなかったのだろう。
静雄と臨也の確執をよくしる彼女にも、今の静雄の心境は分かりかねたに違いない。
静雄自身にわからないことを、理解できる相手は少ない。
新羅はわかっていたから、静雄をそっとしておくことにしたのだ。
二人の他人には、あるいは本人自身にすら理解しがたい複雑な感情のもつれを、新羅はよく理解していた。
静雄はまだ現実が理解できなかった。
いや、したくなかったのかもしれない。
ノミ蟲──折原臨也を殺すのは自分だとずっと思っていた。
それは二人の間でだけ通じる約束のようなものだった。
それが、どことも知れぬ地方の町で、誰ともわからぬやからに殺されたなんて。
「手前は、ここまで俺を裏切るのか……臨也!」
池袋の夜の路地裏で、静雄の叫び声が遠く響いた。
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