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亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
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帝人様ボールペン事件から3ヵ月後。
あんまり話に関係ないですが、ちょっと覚醒帝人様。
付き合ってるけど手も繋いでない静雄と帝人で。


 夜の池袋を、静雄と帝人は並んで歩いていた。
 手が触れ合う距離は恋人同士の距離だ。
 何度も手を握ろうとして、静雄は躊躇って諦める。
 帝人から告白されて、付き合うようになってから半年がたつが、未だに静雄は互いの距離が掴めない。
 帝人は夏休みに入っているが、静雄の仕事は、世間の休日が繁忙期だ。
 自然とデートは、静雄の仕事が終わった後の夜になる。
 高校生を付きあわせるには遅い時間だが、帝人から苦情が来たことはなかった。
 それどころか、夜の散歩を楽しんでいる風がある。
 平凡に見えて、物怖じのしない帝人の性質を静雄は好んでいる。
 だけど、帝人の考えていることは、いつまでたってもわからなくて、わからないことにイラつくより、静雄は静かに困惑していた。
 帝人は時々突拍子もないことを言い出して、静雄を混乱させた。
 それを嫌だとは思わない。
 かえって面白いと思った。
 そう思うたびに、この子供に惹かれている自分に気づく。
 自分を見上げる笑顔を見ると胸が苦しくなる。
 どんだけ俺はこいつを好きなんだと、いっそ笑えてくるぐらいだ。
 30センチ近い身長差がある小柄な体は、華奢すぎて、静雄が触ると壊れてしまいそうで怖い。
 昔あった事件から、好きな人を作るのは止めようと思っていた。
 自分が愛しても相手を傷つけるだけだと信じていた。
 普通の生活など諦めていた自分を、帝人は好きですの一言で打ち砕いた。
 最初は断るつもりだった静雄を釘付けにした強い視線が、忘れられなかった。
 セルティの知り合いだというのだから、帝人も普通の少年ではないのだろう。
 その全てを知ろうとは思わないが、帝人の目と言葉には力があった。
 今はまだ未知数だが、帝人は何者かになろうとしている。
 それは静雄のように人間離れした暴力によるものではなく、人を従える特別な何かだ。
 帝人の側にいると、自然と落ち着いてくる。
 楽と言うのとも違う、どちらかというと安心するのだ。
 どんなことからも守ってやろうと思っているのに、こっちが帝人に守られているような気さえする。
 不思議な奴だよなと思っていると、隣の帝人が携帯を取り出した。
 メールが入ったらしい。
 ちらちらと横を見ていると、帝人が唇の端を吊り上げた。
 その童顔に似合わない大人びた笑みに、静雄は引き込まれた。


「静雄さん」


「あ? なんだ?」


「私のものになりませんか?」


「は?」


 視線の先には満面の笑顔の帝人がいる。
 静雄は帝人の意図を図りかねた。
 時折、帝人の一人称は私になるが、そういう時の帝人の思考は読めない。
 新羅が適当に一人称を変えて会話するが、あれは別に使い分けているわけではない。
 帝人は明らかに意味を込めて私と言う。
 だからこれは冗談じゃない。
 帝人なりの本気の誘いだ。
 考えるまでも無く、静雄は答えた。


「いいぞ。お前が俺だけのものになるんなら」


 それが叶うなら安いものだ。
 静雄は本気でそう思った。
 だが、帝人はくすっと笑うと、冗談ですよと返してきた。


「お互いだけのものになるって、案外難しいものですよね」


「俺たちは付き合ってるんだよな?」


「ええ、そうですよ。でも付き合ってっても、なかなかお互いだけのものになってる人は少ないと思うし、逆に付き合って無くても、相手を自分のものにできることもありますよ」


 何かがひっかかる。
 静雄はなんだかイラついた。


「お前はもう誰かのものなのか?」


 そんなわけはない。
 それで静雄と付き合えるほど、帝人は擦れていないはずだ。


「そんなわけないじゃないですか。僕は静雄さんと付き合ってるんですから」


「じゃあ、誰かがお前のものなのか?」


「さあ、どうでしょう。ないしょです」


「おい」


「冗談。冗談ですよ」


 いつの間にか、一人称が僕に戻っていて、静雄は力を抜いた。
 帝人の本心はいつも読めない。
 だが、帝人が自分だけのものになるのなら、帝人だけのものになってもいいと思ったのは本心だった。
 帝人は自分だけの誰かを手に入れているのかもしれない。
 そう思うと、嫉妬で体が熱くなったが、帝人が冗談にしようと言うなら、そう思い込むようにしようと思った。
 帝人は掴めない。
 そこにひどく惹かれる。
 だから翻弄されるのは、むしろ喜ぶべきことなのだろう。


「でも、いつかは俺だけのものになるんだろ?」


「なるかもしれませんね。先のことは分かりません。でも僕は静雄さんのことが好きですよ」


「俺もお前が好きだ」


 両思いですねと言いながら笑う帝人を見て、さっきのあれは夢だったのだと静雄は思った。



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