未来なんて誰にも分からない。だから人は生きていけるんじゃないだろうか。
そうは思っても、現実に未来の自分が目の前にいるわけで、自分はアーチャーには絶対にならないと思っても、アーチャーの過去は確かに衛宮士郎なのだ。
なんだか納得がいかない。
自分自身に自分を否定されることは、なんて辛いんだろう。
アーチャーの言葉にいちいち反感を覚えるくせに、俺はアーチャーに同情していた。
セイバーと遠坂がいる限り、俺はやっぱりアーチャーにはならないのだと思う。
理想の果てを見て絶望したというアーチャーはそれでも俺の理想そのままで、でも決定的に異なっていた。
投影のし過ぎで変わってしまった色彩も、それしかなかったからこそ鍛え上げられた肉体にも、俺を思わせる要素はどこにもない。
だけど最近俺がアーチャーに似てきたと遠坂が言ったとき、どこがさと反感もあったけれど、くすぐったいような理由の分からない安堵もあって、俺はわけがわからなくなった。
俺はどうして、アーチャーのことばかり考えているのだろう。
アーチャーが目の前にいるから悪いのだと俺は結論付けた。
じいさんの部屋でアーチャーが寝転がっていた。
以前のセイバーのように、今のアーチャーはよく眠る。
食事をさほど取らない代わりに、睡眠を多くとっているようだ。
眠っているアーチャーを見て、睫まで白いんだなと、どうでもいいことを俺は考えた。
アーチャーはイリヤと似ていると思う。
髪が白いだけじゃなく、雰囲気が兄弟でもおかしくないぐらい似通っている。
それは多分、人間じゃないみたいなところが似てるんだと思う。
以前は俺だったはずなのに、どうしてアーチャーはこうなってしまったんだろう。
理想の果てを見たと言われても、過程が分からないから納得できない。
眠っている顔は、厳しく整っていて、やっぱり自分だとは思えない。
だけど目を離せない。
俺は、アーチャーの唇に、そっと自分のそれを重ねた。
思ったより柔らかい感触に驚いて、すぐに離れたけれど、胸はドキドキするし、頭はガンガンとなっていた。
今、俺は何をした。
「なにやってるんだろ、俺」
「それは、私もしりたいものだな」
いつの間にか目を覚ましたアーチャーが、怒るでもなく、じっとこっちを見つめていて、俺はパニックをおこした。
「いや、アーチャーが寝てたから。睫も白いんだと思って。それで、なんだかよくわからなくて」
「ふむ。それで、つい欲情してしまったというわけだな」
「気色悪いこというなー!」
「事実だと思うが」
自分のことなのに、なんで、こいつはこんなに冷静なんだろうか。
理不尽だけど腹が立った。
自分にキスされたんだぞ。少しは慌てるとかしろよ。
「別に私はかまわない」
「殺そうとした相手にか」
「もう、そんな気はない。お前は私にはならない。わかっている」
くすくすと笑って、アーチャーは俺に手を伸ばした。
からかわれている気がして、その手を跳ね除けた俺は、そのまま部屋を出ようとした。
後で何度も考えたことだ。
その時、どうして振り返ってしまったのだろう。
アーチャーは静かに俺を見ていた。
銀色の瞳が湖のように輝いていた。
そこには、なにか深い感情が浮かんでいたけれど、俺にはそれが何かわからなかった。
ただ、たまらなくなっただけだ。
「どうしてだ」
「なぜだろうな。私にもわからん」
何も聞きたくなくて、何も言いたくなくて、俺はアーチャーに深くキスをした。
それはひどく背徳的だった。
そこからは言葉はなかった。
俺のどんな行為にも、アーチャーは声を上げなかった。
だが、繋がりたくて仕方ないのは、俺だけじゃなかったようだった。
服を全部脱がせると、俺はアーチャーの筋肉にそって舌を這わせた。
アーチャーは綺麗だった。
この綺麗な体が、未来の自分なのだとはやはり思えなかったけれど、歪んだ快感は確かにあった。
アーチャの息が上がっているのを感じただけで、俺自身は硬く立ち上がっていた。
慣れた様子で、アーチャーは俺をリードした。
経験の差とはいえ、それにしても慣れていると、少しムッとした。
抱かれることに慣れているらしいアーチャーの身体に、俺はなんだか複雑な気分だった。
勃ちあがった俺自身を、躊躇いもせず口に咥えると、アーチャーは激しくディープスロートを繰り返した。
我慢がきかずに、アーチャーの口の中で発射すると、そのまま雫の一滴まで、丹念に飲み込まれてしまった。
なんだか恥ずかしくなった俺を残して、アーチャーは四つん這いになった。
何を求められていいるのか、さすがにわからないわけはない。
俺は黙って、アーチャーの身体に、深く身を沈めた。
入り口は辛かったけれど、全部納めると、アーチャーの中はひどくよかった。
入れただけで、射精してしまいそうだった。
それを耐えて、俺はアーチャーの身体を前後に揺すり上げた。
何度か繰り返すうちに、前立腺に当たったらしく、アーチャーが身悶えした。
殺そうとした喘ぎが漏れて、ひどく興奮した。
それから、そこばかりを重点的に責めると、アーチャーが声も立てずに涙を流した。
綺麗だと思った。
深い一体感の頂点で、アーチャーの身体の真奥に白濁した液体を叩き付けると、俺はアーチャーの上に倒れた。
身支度を整えた俺たちは、互いに何も言わなかった。
だけどもう戻れないことだけは、お互いに分かっていたと思う。
振り返ってしまった俺が悪かったのか、俺を待っていたアーチャーが悪かったのか、それは俺にもわからない。
ただ、時がこのまま止まればいいのにと、それだけを思った俺は、やっぱり莫迦だったのだろう。
アーチャーが欲しい。
アーチャの姿が見えなくなってから、始めて俺はそう思った。
もうすぐ夏が来ようとしていた。
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念願の士弓です。
やってしまった感でいっぱいですが、書けて嬉しい士弓です。
やはりエロが足りません。精進せねば。
[1回]
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