忍者ブログ
亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
[25]  [24]  [23]  [22]  [21]  [20]  [19]  [18]  [17]  [16]  [15
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


士弓に槍を絡ませてみました。3Pではありません。


 ランサーがアーチャーのことを好きなことは士郎も知っていた。
 だけどそれがどういう意味なのかは、本当にはわかっていなかった。
 ふたりがキスしているところを見るまでは。



 遠坂家の住人は、全員がかなりの確率で衛宮家に出没して勝手にくつろいでいる。
 士郎としては、セイバーにも凛にも文句はないが、アーチャーにちょっかいをだしては軽い戦闘状態に陥っているランサーの存在が悩みの種だった。
 朝から釣りに行って、新鮮な魚を貰っている身としては、はっきり邪魔だとはいえないが、気分が悪いのは確かだった。
 ランサーはアイルランドの英雄だ。
 アーチャーや凛に駄犬と言われようが、士郎から見れば嫉妬するほどかっこいい。
 アーチャーだけでも毎日自分の未熟さを思い知らされているというのに、二人並ぶと実力が拮抗しているのがわかって、なんともいえず悔しい気分になる。
 ふたりが連れ立っていると、それだけで絵になるのだ。
 それに、ランサーが周りを憚らずアーチャーに懐いているのが、士郎は嫌だった。
 うらやましいわけではないが、アーチャーはお前のものじゃないと声を大にして言いたくなる。
 もちろん言える訳はないのだが。
 何度も抱き合っていながら、アーチャーとどうなりたいのか士郎はいまいちわからない。
 口を開けば皮肉ばかりだし、アーチャーの思考回路はまったく理解できない謎次元だ。
 あれだけ士郎を貶しておきながら、何故自分に抱かれることを甘受しているのかもわからない。
 そこまで考えて、士郎はうずくまった。
 ついうっかり夜のアーチャーを思い出してしまい、映像が下半身を直撃したらしい。
 若いということは色々大変なのだった。
 物理の公式を思い出して耐えた士郎は、よろよろしながら台所に向かった。
 凛たちにお茶を入れるためだ。
 そこでクッキーを焼いているはずのアーチャーに声をかけようとして、士郎はそのまま凍りついた。
 そこには触れるようなキスシーンを繰り広げているアーチャーとランサーの姿があった。
 その場で士郎は逃げ出してしまった。



 口付けされている。
 目の前に迫る男の顔を、アーチャーは冷静に観察していた。
 秀麗な男だと思う。
 思ったよりも睫が長い。
 青く長い髪は、この男の白い肌によく似合っている。
 女ならさぞかし胸を焦がす瞬間だろうが、生憎自分は女ではない。
 アーチャーは抵抗もしなかったが、応じたりもしなかった。
 抵抗しないのは不思議だったからだ。
 応じないのは理由がないからだ。
 単に好奇心から、アーチャーはされるがままになっていた。



「キスするときは瞼を閉じるものだぜ」


「本意ではない状況で瞼を閉じるもないものだ。何がしたいんだね君は」


「ずっと言ってるだろ。俺のものになっちまえよ。その方がお前にとっても楽だろ」


「君の言葉はいつも理解に苦しむな。たわごとしか言えない舌なら必要あるまい。私が切りととってやろうか?」



 アーチャーが座に戻ってからも、嫌、聖杯戦争のただなかでも戯れのように自分に触れてくるランサーの隠した真剣さがアーチャーには不可解だった。
 お前に惚れたというランサーの言葉を、アーチャーはまったく信じていない。
 光の皇子たる半神の英雄が、もとはできそこないの魔術師である、ただの人間だった反英雄たる自分にこだわる理由がない。



「こんなところで君が触れてくるから、小僧に見られてしまったではないか」



 士郎の気配なら隠していてもすぐわかる。あの少年は目の前の光景にさぞかし驚いたことだろう。
 士郎がそれをどう思ったかは気にならないアーチャーだった。



「見せつけてやったんだよ。お前が誰のものかを坊主も思い知るべきだろ」


「少なくとも君のものではないのは確かだ」


「まさか、坊主のものだとでもいうんじゃねーだろうな」



 それこそまさかだ。
 アーチャーはアーチャー自身のものですらない。
 アーチャーは世界のものだ。それが世界と取引した代償なのだから。
 世界の掃除屋として、磨耗しながらもアーチャーは存在している。
 誰かのものになれる権利など、アーチャーにはあり得ない。
 ただ召喚されているときのサーヴァントを所有格で語れるのはマスターのみだ。
 その意味では、アーチャーの身は士郎のものといっても間違いではない。


「君がどう思うのも勝手だがね。私は君のたわけた言動に付き合う気はないことを、何度も言わせないで欲しいな」


「いつか本気にさせて見せるから見てろよ! って、どこいくんだよ」


「クッキーと紅茶を凛とセイバーに持っていくに決まっているだろう。ここで私が何をしていたと思っているんだ。すぐにイリヤスフィールもくるだろうしな」


「最大のライバルは坊主より嬢ちゃんたちのような気がするな」


「またたわけたことを。君の分はないからもう帰れ」


「マスターを置いて帰れと?」


「小僧に話があるのだろう。勝手にしたまえ」


「はあん。じゃあ、そうさせてもらうわ」



 そう言って、青の槍兵は姿を消した。
 紅茶セットとクッキーをお盆に載せて、アーチャーはため息をついた。
 ランサーの言葉は信じられない。
 だが、確かにランサーのものになれるのなら、自分はもっと楽だろうというのもわかる。
 しかし、どうしようもないことというのは歴然としてあるのだ。
 だから、自分がランサーのものになる未来はあり得ない。
 少なくとも衛宮士郎をマスターに持つ以上は、ランサーの手をとるつもりはなかった。
 士郎と自分の間にも答えは欲しくなかったけれど。
 アーチャーはただ、少しばかりの猶予だけが欲しかった。



 外まで逃げてしまったが、士郎は戻ろうかどうしようか迷っていた。
 ランサーとアーチャーのキスシーンはショックだったが、アーチャーが応えていなかった事は士郎にもわかった。
 ただ拒んでもいなかったことも確かだ。
 そうじゃなければ、今頃UBWが発動されているだろう。
 アーチャーの性格からすれば、ランサーを拒んでも受け入れても、どちらもおかしくない。
 ランサーと自分を比べることなどおこがましいとわかっていても、アーチャーをランサーに取られるのは許せない気がした。



「よ、坊主。どこに行くんだ」


「ランサー?」



 士郎はランサーを睨みつけた。
 心で負けるのは嫌だった。
 ランサーは面白そうに士郎を眺めていた。



「なぁ、坊主。俺はあいつをもらうぜ」


「アーチャーはお前のものになんてなるもんか。ふられてばっかのくせに」


「俺は気長に行くことにしてるんだよ。坊主こそ未来の自分相手に不毛なだけだろ」


「俺はアーチャーにはならないよ。それに、たとえ同一の存在だったとしても、俺がアーチャーを好きなことに変わりはないんだ」


「あいつは、あれだけ大切にしていた嬢ちゃんさえ裏切った。マスターとサーヴァントの関係だって絶対じゃないんだぜ」


「そんなの問題じゃない。俺がアーチャーを欲しくて、アーチャーが誰を欲しがっているのか、、重要なのはそれだけだ」


「けっこう自信があるんだな。まあ俺も焦んないから勝負はじっくりいこうぜ。ま、今日のところは引いてやるけど、油断はしねーことだな」



 ランサーが去った後、やってきたイリヤと士郎は茶の間に戻った。
 何もなかったようなアーチャーを見ながら、何度も考えてしまう。
 自分は本当にアーチャーが好きなんだろうか。
 アーチャーに対して持っている感情は、言葉にできないものだ。
 凛のことはなんとなく好きだと思うし、守りたいと思う。
 セイバーのことは純粋に好きだし、信頼している。
 イリヤのことも桜のことも大切にしたいと思う。
 でもアーチャーに対するこの独占欲はなんだろう。
 彼女たちに向けられる好意に対して、アーチャーに向かう感情はどこかほの暗いものを含んでいる。
 でもアーチャーを奪われることは許せないと思う。
 それだけは嫌だった。



「じゃあね、士郎、アーチャー」


「お邪魔しました」


「バイバイ。またね」



 全員がいなくなった茶の間で、士郎がぼーっと座り込んでいると、背中からアーチャーがキスしてきた。
 触れるようなキスから、深い口付けを繰り返すと、いつの間にかアーチャーを押しすような体勢になっていた。
 何を望まれているのか、考えなくても分かる。
 だが、今日はアーチャーに聞いてみたかった。



「アーチャー。あんたなんで俺とこういうことするんだ」


「何を今更。これはただの欲望だ。意味などない」


「違うだろ。少なくとも俺は違うと思う」


「欲望だということにしておけ。余計ないことは、今は関係ない」


「アーチャー!」


「うるさい」



 士郎の言葉は、アーチャの唇で塞がれた。
 深い口付けに溺れて、そのままふたりは身体を重ねた。
 意味などいらない。
 ただ欲しいという気持ちだけがあればいいと、アーチャーは士郎との行為に没頭した。
 夜ははじまったばかりだった。

拍手[0回]

PR


この記事にコメントする
name
title
color
mail
URL
comment
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー 
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
フリーエリア 
最新コメント 
[02/08 ボンバー尊氏]
[12/14 炎]
[12/11 炎]
[12/10 炎]
[11/29 noriko]
最新トラックバック 
プロフィール 
HN:
亜積史恵
HP:
性別:
女性
趣味:
読書。ゲーム。
自己紹介:
おたくです。腐女子です。半病人です。
バーコード 
ブログ内検索 
P R 
カウンター 
アクセス解析 


忍者ブログ [PR]