魔力補充というなの性描写があります。自己判断でお読みください。
もはや衛宮士郎の原型を留めていない自分自身に、今更違和感など感じはしないが、過去の自分を見つめていると、この甘くて馬鹿な小僧がどうやって自分にたどり着くのか不思議な気はしてくる。
もちろんその過程を辿って今の自分が存在するわけだが、その記憶はどこか他人事のように希薄だ。
狂ったように自分殺しを切望しながら、衛宮士郎への憎しみは、他人に対するもののようだった。
召喚されてはじめて過去の自分を見たとき感じたのは、殺意よりも嫌悪感だった。
見たくもない過去の残滓を突きつけられた時、人が思うだろう当然の感情を抱いただけで、殺意にまではいたらなかった。
憎しみを抱いたのは、共に行動するようになってからだ。
正義の味方を価値観のすべてにしてしまった衛宮士郎の手は、まだ誰の血にも塗れていないきれいなものだった。
その言葉は理想であり、現実から乖離していた。
磨耗しきった私は、理想を正義として語る衛宮士郎を心底憎んだ。
私の手は血で汚れきっていた。
正義の味方を目指しながら、その一生は矛盾していた。
世界と取引までして得た力は、ただ世界の掃除屋として磨耗していくばかりだった。
守護者に正義などない。
そこにあるのは、残酷なバランスだけだ。
世界の均衡を崩すものを消去する。
その繰り返しが私の存在を磨耗させた。
憎しみは私にとっての救いとなった。
衛宮士郎は死ぬべきだった。
正義の味方などにあこがれる前に。
あの火災の日に家族と共に死ぬべきだったのだ。
だが、切嗣を恨むことはできなかった。
あの日一度死んだ自分を人間にしてくれた切嗣を、誰よりも慕っていたからだ。
雛がはじめて見たものを親と思うように、私にとって切嗣はすべてだった。
だから切嗣が語る正義の味方に憧れた。
自分自身というものがないから、切嗣の理想が衛宮士郎を形作るすべてになってしまった。
守護者になってからずっと考えていた。
どこから間違ってしまったのかと。
何度機会を与えられても、私は今の自分にたどり着いてしまう。
だからもう、衛宮士郎という存在そのものが間違っていたのだと思った。
守護者として存在する以上、過去の改ざんなどできるかどうかもわからないのに、私はあの日、自分殺しにすべてを賭けた。
そこで過去の自分自身から、思いもよらない答えを得た。
自分の生き方が間違っていなかったのだという想いと、この衛宮士郎は自分ではないのだという納得が心に落ちてきて、私はある意味満足だった。
だから世界の果てまで磨耗していくとしても、それでも絶望したりしないと思えた。
だから再召喚されたことは、世界のバグであったとしても、ほんの少しだけ感謝した。
最後に裏切ってしまったけれど、最高のマスターだった凛のことが気になっていたからだ。
小僧のことは欠片も心配していなった。
未来の自分に打ち勝ったうえに、気高く優しい少女ふたりに見守られて、道を踏み外すこともないだろうと思っていた。
だから今、衛宮士郎の体に馬乗りになっている状況は、互いにとって不可解だったが、はじめてしまったものは仕方がないので、私はそのまま楽しむことにした。
「状況がつかめないんだけど」
途方にくれたように衛宮士郎が呟いたが、私の下で大きくなった肉茎を震わせている状態では、どんな言い訳も虚しいだけだ。
「奇遇だな。私も同じことを思っていたところだが、この状態ではしかたあるまい。最後までさせてやるから楽しむといい」
そういうと、私はズボンと下着を脱いで、立ち上がった小僧のものを口に含んだ。
舌を絡めて上下すると、先走りの液が流れてくる。
霊体とは便利なものだなと思った。
本来なら感じるはずの苦味や青臭さが感じられない。
むしろそれは甘く感じられた。
「ちょっ、ちょっとまった! 変だろ! なんでそんなもの口にしてんだよ! 少しは躊躇しろよ!」
「うるさいぞ。気持ちよくさせてやるから、少し黙れ。貴様からの魔力が不足してるから、その補充だと思えばよかろう」
「そういう問題なのかよ。だいたい自分同士でどうしてこんなことになってるんだよ。気にならないのか」
往生際の悪い小僧の鈴口を舌で刺激すると、抵抗が緩んだ。
本気で嫌なら逃げればいいのだ。
口でなんと言っても、ここにいるのだから同罪だ。
「私は別に気にしないがね。元は同じだから魔力も馴染みやすい。だいたい、今の状況になったのは私だけのせいではないだろう」
「そ、それは、そうだけど……」
それ以上の言い訳は無視して、私はもう一度喉の奥まで肉茎を含むと、喉全体で愛撫する。
その間に受け入れる場所を指で解したら、私のものも触れていもいないのに立ち上がっていた。
我ながら簡単な体だ。
快楽に弱い体をはしたないとは思うが、悪いことだとは思わない。
同じ魔力補給なら、楽しめる方がいい。
「んっ……く……あっ……ん」
指を増やすと、意識せずに声が漏れた。
十分に解れたのを確認して、塗れた肉の棒を秘部にあて、ゆっくり腰を下ろす。
すべて納めきると、なんともいえない安心感があった。
貫かれているときだけ感じる充足感だ。
慣れた体が、すぐに快感を拾い出す。
どうやら私は興奮しているらしい。
あきらかに欲情した体が、内側を貫くものをきつく締め上げる。
「くっ!」
小僧の額には汗がにじんで、眉を寄せた表情に私はさらに欲情した。
自分でも過去の自分にここまで欲情できることが不思議ではあるが、似ているのに似ていない、似ていないけど似ている部分に、背徳的な欲望を強く感じて止まらなかった。
「あっ……あ……ん……くっ……ん」
唾液が口の端から零れ、喉を伝っていく。
体が熱い。
体を動かすたびに、中のものがいいところに当たって、身をよじってしまう。
体の奥深くに、熱い飛沫が叩きつけられるのを感じて、私も白濁した液を吐き出した。
霊体は便利だ。
最中も同じことを考えたが、終わったあとも同じ感想をもった。
衛宮士郎の体に残った白い液体を舐めとって、タオルで自分の体を拭くと、体の中の精液は、早くも魔力として消化されていた。
後始末が楽でいい。
小僧はなんともいえない顔で、されるがままに転がっていた。
「なあ、なんでだ」
衛宮士郎が尋ねるのを、私は首をかしげて見つめ返した。
途端に、顔を赤く染めて視線をそらすのが、意味不明だ。
やってしまったものはしょうがないではないか。
「私だけのせいにするつもりか。貴様も同罪だろう」
「だけどさ、あんた俺を嫌いだろう?」
嫌い?
それは考えたことがなかった。
確かに以前は嫌悪感を持っていたし、憎んでもいたが、今はどうだろうか。
考えてみたが、答えはでなかった。
だが、言えることはひとつだけある。
「べつに今はそんな感情はないが、私は貴様に興味がある」
「それって、どういう意味でさ」
納得がいかないような顔で、たずねてくるのが少しおかしかった。
「同じようで違い、違うようで同じな貴様がどんな生き方をするのか、考えると興味深い。もちろん、さっきのような意味も含めてな」
強張った唇に自分のそれを重ねると、転がっていた体がばねの様に跳ね上がった。
いつか世界のバグとして処理されるだろう平穏な時間の中で、面白いことを見つけたと思って、私は腹を抱えて笑った。
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