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亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
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瀬戸口×速水です。
許しは乞わない。
誰のためでもなく、己の欲を満たすために、俺は今日も舞い続ける。


 来須がいないことはわかっていた。
 鉢合わせは勘弁して欲しいと瀬戸口は思っているが、あの無口なスカウトは平然と瀬戸口にプレッシャーをかけてくる。
 殺気ではないのが、かえってやっかいだと、瀬戸口は心の中で嘆息した。
 速水を共有することに、異論は当然ありまくりだったが、速水を抱く男が自分だけではないことに煩悶する時期はもう過ぎた。
 自分では与えられないものを来須が与え、来須が与えられないものを自分が与えている。
 速水の心が欲しいと思わないわけではなかったが、誰も芝村舞の代わりには成り得ないのなら、ひと時でも速水を独占できることを幸運だと思うべきだ。
 できもしないことを思いながら、瀬戸口は速水の部屋の扉の鍵をあけた。




「おかえり、瀬戸口」


 多目的結晶で何かをしながら、速水は瀬戸口を迎え入れた。
 あいかわらず生活感のない部屋は、瀬戸口以上に速水の気配を薄くさせる。


「今日はいないんだな」


「いくらオレでも、瀬戸口がくるのわかってて呼ぶほど悪趣味じゃないが」


「どうだかな。悪趣味の極致だろ、おまえさんは」


 来須がいないことは、ちゃんとわかっていた。
 速水のマンションに来る約束はしていなかったが、今夜瀬戸口が死の舞を踊ってきたことを、速水が知っているからだ。
 当然のように手を伸ばすと、抵抗もなく抱き寄せることができた。
 その度に心が血を流すのに、その傷を癒せるのもこの行為だけだというのは皮肉な話だ。


「今日はずいぶんと素直だね。厚志」


「契約だからな」


 芝村舞という最強にして最愛のパートナーを失ってから、速水は変わった。
 もしかするとそれが本性だったのかもしれないが、瀬戸口はかえってその絶望的な虚無に引き込まれた。
 東原のかわりにしているつもりはないが、速水はそう考えているのかもしれない。
 心の欠落を、互いで埋めていると。
 そうではない。
 確かに、あの無垢な少女を愛していた。
 それはだが、速水に対する欲望に満ちた飢えとはまったく異なっていた。
 速水を抱いたのは、少女を失ってからだが、その前から瀬戸口は速水に欲望を感じていた。
 砂漠で水を求めるように、瀬戸口はずっと渇いていたのだ。


「血の匂いがする」


「おまえさんの好みだろう?」


 フローリングの床の上で速水を暴きながら、苦々しい思いで愛しい肉体を蹂躙する。
 これは取引だ。
 同族を殺す代わりに、至高の存在をひとときでも独占できる。


「来須はどんなふうに、おまえさんを抱くんだ?」


「やはり、悪趣味なのはきさまだな。そんなに気になるなら、今度混ぜてやろうか?」


 オレが他の男に抱かれる姿を正気で見られる自信があるならなと、厚志は嘲笑した。


「時々おまえを食い殺してやりたくなる」


「鬼らしい台詞だが、殺されてやるわけにはいかないな」


 実力からしても、もはや瀬戸口は速水の敵ではない。
 それでも、今なら殺せると、速水を抱くたび思いながら、実行できない自分を瀬戸口は知っている。
 承知の上で、速水は瀬戸口を挑発する。
 誰よりも死を望んでいるのは自分だろうに、死んだ女との約束のためだけに生きる速水を瀬戸口は憎んだ。
 今となっては誰よりも憎い相手を、瀬戸口は狂ったように求め続ける。
 とっくの昔に狂っているのだと、苦く自嘲する。
 愛ではないと、ずっと思っていた。今でも思っていることは変わらない。
 これは、浅ましい欲望と執着だと、何度己に言い聞かせただろう。
 それでも甘い果実のような身体を味わうたびに錯覚しそうになる。
 あの男もそうなのだろうか。
 芝村舞から速水に家令として下げ渡された男もまた、役割を超えてこの麻薬のような身体から離れられないのか。


「来須をきさまといっしょにするな」


「心を覗くのはよくないぜ、坊や」


 久々にそう呼ぶと、微かに眉がひそめられたが、すぐそれは冷たい笑顔に変わった。


「力など使うまでもない。そういう顔をしていたからな。きさまの表情は読みやすすぎる」


 瀬戸口だけではなく、己自身さえ引き裂く言葉を吐く唇を、自分の唇でふさぐと、いつも以上の激しさで速水の身体を隅々まで愛した。
 声が甘い吐息に掠れるまで、瀬戸口は速水を放そうとはしなかった。
 誰にも許しなど乞うつもりはない。
 これは瀬戸口が望んだことだ。
 後悔などしていない。
 死を呼ぶ舞踏として、戦場で殺戮を繰り返してでも、瀬戸口は速水を欲しいと願ったのだから。


「厚志!」


 欲望のままに速水を抱きながら、瀬戸口の飢えはますばかりだ。
 これは愛ではない。
 なのに、愛していると言えない事がこんなにも苦しい。
 嘘ならば、速水はきっと許してくれるだろう。
 それでも、その言葉を瀬戸口は口にできなかった。
 だから、心の中でだけ繰り返す。
 愛していると。
 許しは乞わない。絶対に。
 なのに、断罪の日を待ち焦がれている己を、滑稽だと瀬戸口は思った。


(愛している。厚志)


 言えない言葉を、瀬戸口は心の中で繰り返した。
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瀬戸口と来須の速水をめぐる関係がうちでのテーマでもあります。
この多角関係の中、ふたりの立ち位置の違いとか、うまく書けるようになりたいですね。
全員にとって、舞ちゃんは特別な呪縛になってますが、それぞれ思うところがまるで違う。
そのうち来須にとっての瀬戸口とか舞とか速水とか書くつもりですが、来須はわりと瀬戸口目に入ってません。
うちの瀬戸口は際限なく暗いです。
ダークなのは厚志だけど。
 

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