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亀更新で二次創作やおいを徒然なるままに書き散らすブログです。ジャンルは様々気が乗った時に色々と。基本は主人公受け強気受け兄貴受け年下攻めで。でもマイナー志向もあり。
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本館改造前のキリリク。
まお様に捧げました。
八戒×三蔵です。

 自分で入れたお茶を飲みながら、八戒は視線を正面に向けた。
 広げられた新聞に隠された表情は、きっといつもどおりの仏頂面だろう。


「熱心ですね」


「ああ」


「悟空たち戻ってきませんね」


「ああ」


「三蔵、僕の話聞いてます?」


「ああ」


「愛してますよ」


「あ…ああ? 今なんて言った!」


 新聞を握り締め、叫びながら立ちあがった三蔵に、八戒はにっこりと微笑んでみせる。


「もう一度、言ってほしいんですか。お望みなら、何度でも言いますけど。すこしありがたみが減るような気がしませんか」


 三蔵は感情の沸点が低いので、からかいがいがある。
 命がけの楽しみだが、今回の勝負は八戒の勝ちらしい。


「馬鹿くせえ」


 あきれたように、三蔵は椅子に座りなおした。


「言いたいことがあるなら、さっさと言え」


 三蔵は聡い。これが悟淨や悟空なら、順序だてて説明しなければ、八戒の意図は汲み取れないだろう。
 時には、言葉にしない声まで、三蔵は読み取ってしまう。


(こわい人ですよね)


 内心の感想は胸に納めて、八戒は状況を楽しむ事にした。
 たまたま寄った町は、今日が祭りの日で、悟淨はナンパ、悟空は屋台めぐりで外に出ている。
 八戒も途中までは悟空に付き添っていたのだが、なんとなく宿に残した三蔵が気になって戻ってきてしまった。
 自分がいようといまいと気にする人じゃないことはわかっていても、二人っきりという場が旅の間はどうしても限られているので、貴重な時間を無駄にしたくなかったのだ。
 とりあえず、今は、下心はなかったが、何度か身体を重ねた相手との空間を、八戒はどこかくすぐったいように感じている。
 互いの関係に、八戒は名前をつけられない。
 三蔵がどういう気なのかわからないし、自分の気持ちも不明瞭だ。
 曖昧なことが、八戒は苦手だった。
 いつも、どこか理詰めで考えている自分がいる。
 すべてに理由を欲しがっている。


「空が青いのは何故かって、考えたことありませんか」


「ねえな」


「ひとことですか」


 八戒は苦笑するが、三蔵らしい答えだとも思う。


「僕は気になりましたよ。子供たちにもよく聞かれましたから、けっこう素朴な疑問なんじゃないですかね」


「空が青いことなんて、当たり前のことだろ」


「ええ、そのうち皆忘れてしまうんですよね。でも、僕はその理由を、ずいぶん子供の頃に知ってしまったんです」


「で、なんだ?」」


「だから、空が青いことには理由があるんだと感動しまして」


 世の中のすべてに理由があるのだと思いこんだのは子供だったからなのか。


「純粋な頃もあったんですね」


「馬鹿かお前は」


 三蔵はどこか不機嫌そうに吐き捨てる。
 自分から目を逸らす三蔵の態度が不自然で、八戒は少し気になったが、なんとなく気まずい沈黙の中で、過去を振り返って自嘲する。


(そう。馬鹿ですよね)


 幸せだった時には考えもしなかったが、今考えれば、花楠を愛したのにもちゃんとした理由があった。
 彼女が双子の姉だったから。
 誰にも愛されなかった自分を愛してくれた、もうひとりの自分を愛した。
 究極のナルシズム。
 もし、彼女が双子の姉でなかったら、自分は彼女を選んだだろうか。
 わからない。
 では、自分が三蔵に触れてしまった理由はなんだろう。
 三蔵が自分を受け入れる理由は。
 救いを求めているのか、そんな身勝手なことが許されるのか。
 雨という共通のキーワード。
 自分の心の飢えを満たすために、三蔵の傷につけこんだのは八戒の方だ。
 罪人が触れるには、あまりに尊いその存在を、汚しているような気さえする。


(僕は……)


 スパーンという景気のいい音が響く。
 暗い淵を覗き込むように、自分の中に沈んでいく思考を、頭に走った痛みが正気に戻した。


「えっと、僕なにかしました?」


 三蔵の手には、八戒をどついたらしいハリセンが握られている。


(いつものことながら、どこからでてくるんでしょう)


 すさまじく機嫌が悪い。
 八戒が三蔵の攻撃を受けたたのは、実はこれがはじめてだ。


「あの…三蔵?」


「赤かろうが、青かろうが、空は空なんだよ!」


 乱暴にハリセンを机の上に置くと、三蔵は一気に言葉を続ける。


「望んでもいねえことを、この俺が許すと思ってるとしたら、この場で撃ち殺してやるから黙って死ね」


「それって…三蔵」


「俺に二度、同じことを言わせるな!」


 言葉の過激さのわりには、三蔵は首筋まで赤く染めた顔を下に向けたまま、ほんのわずかに震えている。


「すいません」


「お前は、考え過ぎなんだよ」


 すべてをありのままに受けいれること。
 簡単で難しいことを、三蔵は自然に体現している。
 三蔵への想いに、名前をつける必要などないのだ。


「もう一度、言っていいですか」


 テーブルごしに三蔵の頭を抱き寄せて、八戒は呟く。


「愛しています」


 三蔵は何も言わなかった。
 窓から見える、突き抜けるような蒼穹。


「ああ、空が青いですね」


 幸福な気分に満たされて、八戒は三蔵の黄金の髪にキスをした。


----------------------------------------------------------------------

あとがき
まお様に捧げる八戒×三蔵ですが、これ、リククリアしてます?
本当にこれはほのぼのなのか。
Hはないけどさ。
すいませんです。
これでかんべんしてください。
今はこれが精一杯。

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